はじめに
今回紹介するのは、渡邉正裕さんの著書『いい会社はどこにある?』です。
<著者のプロフィール>
渡邉 正裕(わたなべ まさひろ)
ニュースサイト『MyNewsJapan』のオーナー、編集長、ジャーナリスト。『企業ミシュラン』を主宰。1972年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、日本経済新聞の記者、PwCコンサルティング(現・日本IBM)のコンサルタントを経て、インターネット新聞社を創業。一貫して「働く日本の生活者」の側に立ち、雇用・労働問題の取材・執筆を行う。著書に『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社)、『35歳までに読むキャリアの教科書』(ちくま新書)など多数。
僕は、就職活動をしている時期にこの本を買いました。
以前紹介した『メモの魔力』や『絶対内定』で自己分析をした後に、どんな会社に入れば良いかを知りたかったからです。
この本は、5cmほどある鈍器本です。
辞書的に使うのが良いでしょう。
以下のようなチャートがたくさん使用されていてとても見やすいです。
内容としては、「仕事」「生活」「対価」の3つの軸に分かれています。
僕的には、「仕事」軸の部分を特に重要視して会社を選びたいと考えたので、この軸の内容に絞って紹介します。
転職を考えている方におすすめですが、何よりも新卒での就職を控えている大学生にこそ読んでほしい一冊です。
- 「やりがい」を重要視して会社を選ぶ
- 将来の「キャリア」を考えて会社を選ぶ
- その他の内容
- 補足
※本の要約ではなく、僕が吸収したことのアウトプットです。多少内容が異なっている部分や僕の意見が混ざっています。記事の削除を希望される著作権者の方は、お問い合わせフォームよりお知らせください。即刻、削除いたします。
「やりがい」を重要視して会社を選ぶ
まず、大前提として「いい会社」は人によって違います。
どんな時に「やりがい」を感じるのかも違います。
自己分析を通して、自分を理解することが大切です。
そのうえで会社を選ぶのが良いでしょう。
年齢に関係なく仕事を任せてもらえるか
年齢に関係なく仕事を任せてもらうために、見るべきポイントは5つあるそうです。
- 平均年齢が若いこと
- 重厚長大産業ではないこと
- ビジネスモデルのゼネコン度が高いこと
- 経済的規制の多い業界ではないこと
- 新規事業にチャレンジしやすいかどうか
1番については、特に勉強になりました。
会社という組織は通常、ピラミッド型の形をしています。
昇進すればするほど、部長などの役職の数は少なくなります。
ポストの数が限られているからです。
その中でも、会社を2つのタイプに分けることができます。
サラリーマン組織とプロ集団です。
サラリーマン組織では、出世競争から漏れてしまうこともあります。
そうなれば、「追い出し部屋」などに行かせられることとなるでしょう。
もしくは、企業が割増退職金などのインセンティブを手厚くして早期退職をうながす場合があります。
そうならないためにも、企業が成長ステージにあり、ポストの数が増えているような会社が理想的です。
サラリーマン組織を選ぶのであれば、所属社員の平均年齢が若い会社を選ぶことが大切です。
そすることで、権限を持って仕事に取り組める可能性が高まります。
僕は、この内容を読んで、なんとなく総合職を選ぶことが危険であるなと思いました。
一方、プロ集団は少し違います。
ミラミッド型をしている組織を飛び出たとしても、違ったキャリアパスを歩むことができます。
例えば、お医者さんです。
大学病院などの大きい組織を出て、自分でクリニックを開いている人も多数存在します。
2番の「重厚長大産業ではないこと」に関しては、一つのプロジェクトのサイクルが深く関係しています。
大きなプロジェクトになればなるほど、期間は長くなり、自分が関わる部分は全体のほんの少しになってしまします。
裁量権を持って働きたいのであれば、最終商品のアウトプットサイクルが短い軽薄短小産業が良いでしょう。
3番の「ゼネコン度が高いこと」については、システムエンジニアをイメージするのがわかりやすいでしょう。
富士通などのエンジニアになると、プロジェクトマネージャー(PM)として、子会社の人たちをまとめる立場になることが多いそうです。
つまり、裁量を持って働けることで、やりがいを感じやすいというわけです。
自律的に仕事内容を選べるか
ここでは、以下の5つのポイントが紹介されていました。
- コーポレート系 vs 営業系
- 営業職の4タイプ
- ジョブ型 vs メンバーシップ型
- 職種別採用 vs 一括採用
- やりたい仕事をやらせる vs 仕事は会社が決める
僕が印象に残ったのは、2番の「営業職の4タイプ」です。
ノルマが一律に課されているようなものではなく、自分の工夫次第で成績が大きく変わるソリューション営業に魅力を感じました。
僕は、そのほうが「やりがい」を感じやすいのです。
3つ目の「ジョブ型 vs メンバーシップ型」も特に重要です。
アメリカと日本で特に違うところです。
アメリカでは、ジョブ型雇用の会社が多く、特定の事業や仕事が無くなると働いていた人は解雇されます。
一方、メンバーシップ型の雇用が採用されている日本では、配置転換することになります。
スキルのない人が1から仕事を学ばなければなりません。
もちろん、生産効率は悪くなります。
これが、日本で賃金が上がらない一つの要因でしょう。
本来、失業率と賃金の高さはトレードオフの関係なのです。
4番の「職種別採用 vs 一括採用」は、いわゆる「配属ガチャ」に関してです。
日系企業の多くは、「ポテンシャル採用」という名の一括採用を行なっており、配属は運次第になります。
大抵の場合、以下の3種類の希望を第一希望から第三希望まで聞いて、どれか一つが叶えば良い程度だそうです。
- 事業部署の希望
- 職種の希望
- 勤務地の希望
5番の「やりたい仕事をやらせる vs 仕事は会社が決める」も、とても大切です。
どれだけ自由にやらせてもらえるかの軸です。
これは人によって、好みが違うでしょう。
将来の「キャリア」を考えて会社を選ぶ
専門能力が身に付くか
ここでは、以下の3つのポイントがありました。
- 規制に守られていない vs 規制業種
- スキルと学問の市場ニーズが高い vs 低い
- 英語が身に付く会社 vs 不要な会社
僕的に大事にしたいのは、1番の「規制に守られていない vs 規制業種」です。
まず、著者によると仕事能力は4つの要素に分けられるそうです。
- ポータブルスキル分
- 社内向けスキル分
- 会社の看板プレミアム分
- 規制プレミアム分
規制に守られている会社で働くと、②〜④の力は身につくかもしれませんが、汎用性の高い①の力を身につけることはできません。
自分の今後をキャリアを考えた時に、①を身につけられるかが大切です。
2番の「スキルと学問の市場ニーズが高い vs 低い」については、以下の図がわかりやすいです。
内外で多様なキャリアパスを描けるか
僕が最も大事にしている軸でもあります。
ポイントは、以下の3つです。
- 留学、資格、社内認定などの専門職キャリアが多彩であるか
- 適度な離職率が保たれているか
- 排出ではなく、輩出
1番については、社内のキャリアパスに関してです。
留学に関しては、社費留学をさせてくれる企業もあれば、退職して自費留学しなければならない企業もあります。
また、稀に会社に籍をおいたまま留学できる例もあるそうです。
『Pivot』の佐々木紀彦さんが取り上げられていました。
2、3番に関しては、社外のキャリアパスに関してです。
大量採用・大量解雇が前提の会社に入ってしまうと、「排出」されます。
悪く言えば「使い捨ての駒」みたいなものです。
キャリアアップにつながりません。
会社を辞めた後のキャリアを人事を通さずに取材できるのが理想だそうです。
その他の内容
今回紹介した「仕事」以外の「生活」と「対価」の軸については、『Pivot』というメディアで紹介されています。
「生活」軸
【生活編①】労働負荷の重い会社、軽い会社
【生活編②】ブラック化しやすい業界・会社
【生活編③】勤務地を選べる会社、選べない会社
【生活編④】女性雇用の6タイプ
↑これは、前回紹介した『新・生産性立国論』にあった内容とも重なります。
【生活編⑤】「人間関係」で見る社風の4タイプ
「対価」軸
第1回(前編)報酬で見た5タイプの企業
第1回(後編)プラチナ昭和企業の葛藤
第2回:トヨタVSコンサル会社
第3回:人事評価マップの4分類
第4回:60代、70 代でも食える仕事
第5回:会社選びの5つのステップ
補足
僕自身、この本を読んでとても興奮しました。
就活期間中、毎日本を開いていたように思います。
現在、就職する会社を、2社で迷っています。
専門書の出版社で編集者をやるか、SIer企業でエンジニアをするか、まだ結論は出ていません。
好きなことをとるか、対価をとるか、結局悩んでしまっています。
自己分析が足りないのかもしれません。
みなさんは、この本を読むことで人生の幅が広がるかもしれません。
とても分厚い本ですが、一冊本棚に置いておくことを強くお勧めします。
おわりに
昨今、給料が低いということが多くのメディアで取り上げられています。
これの一つの要因として、雇用の流動性が低いことが挙げられるでしょう。
以前紹介した『新・生産性立国論』という本と重なる部分もあり、とても理解が深まりました。
僕は、みなさんが満足のいく人生を歩めることを祈っています。
【著作権者(著者、訳者、出版社)の方へ】
当記事では、本が好きという方に対して面白い本を紹介することを目的としています。
書籍上の表現をそのまま使うのではなく、自分の言葉で描き直すように心がけています。
また、本に対してネガティブな印象を与えないことはもちろん、ポジティブな印象を与えられるように記事を執筆しています。
しかし、万が一行き届かない点があり、記事の削除を望む所有者様がいましたら、お手数ですが、
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