はじめに
今回は、浅生鴨さんの著書『ぼくらは嘘でつながっている。』を紹介します。
<著者のプロフィール>
浅生 鴨(あそう かも)
1971年兵庫県生まれ。作家、プランナー。出版社「ネコノス」創業者。早稲田大学第二文学部除籍。
中学時代から1日1冊の読書を社会人になるまで続ける。ゲーム、音楽、イベント運営、IT、音響証明、映像制作、デザイン、広告など多業界を渡り歩く。31歳の時、乗っていたバイクが大型トラックと接触。三次救急患者として病院に運ばれ10日間意識不明で生死をさまよう大事故に遭うが、一命を取りとめる。「死にそうになるのは淋しかったから、生きている間は楽しく過ごしたい」と話す。
リハビリを経てNHKに入局。制作局のディレクターとして「週刊こどもニュース」「ハートネットTV」「NHKスペシャル」など、福祉・報道系の番組制作に多数携わる。広報局に異動しし、2009年に開設したツイッター「@NHK_PR」が公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、60マン以上のフォロワーを集め「中の人1号」として話題になる。2013年に初の短編小説「エビくん」を「群像」で発表。2014年NHKを退職。現在は執筆活動を中心に自社での出版・同人誌制作、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がける。著書に『伴走者』(講談社)、『アグニオン』(新潮社)、『だから僕は、ググらない。』(大和出版)、『どこでもない場所』『すべては一度きり』(以上、左右社)など多数。
元ラグビー選手。福島の山を保有。声優としてドラマに参加。満席の日本青年館でライブ経験あり。キューバへ訪れた際にスパイ容疑をかけられ拘束。一時期油田を所有していた。座間から都内まで10時間近く徒歩で移動し打ち合わせに遅刻。筒井康隆と岡崎体育とえび満月がわりと好き。2021年10月から短編小説を週に2本「note」で発表する狂気の連載を続ける。
僕は最近、今野良介さんというダイヤモンド社の編集者にハマってしまい、この本を購入しました。
この本を読むと、「嘘」についてのイメージが変わります。
かなり哲学的な話でありながら、わかりやすいです。
この本の最大の特徴は、著者である浅生さんの「嘘」に対する考え方が嘘を用いて書かれている点でしょう。
まさに、「嘘つきの嘘つきによる嘘つきのための本」です。
この本は、頻繁にバイトに遅刻してしまう方や友達を楽しませたい方におすすめです。
それでは、以下のポイントに分けて紹介します。
- 世の中に「事実」なんてものはない
- なぜ、人は嘘をつくのか?
- 嘘との向き合い方
- 嘘の可能性
※本の要約ではなく、僕が吸収したことのアウトプットです。多少内容が異なっている部分や僕の意見が混ざっています。記事の削除を希望される著作権者の方は、お問い合わせフォームよりお知らせください。即刻、削除いたします。
世の中に「事実」なんてものはない
みなさんは小さい頃に「嘘をつくことはいけません」とよく言われたと思います。
僕も嘘つきはいけないと教わってきました。
実際、ナルトでも、木の葉丸がペインの地獄道によって、舌を抜かれるシーンがあります。
(出典:NARUTO-ナルト- コミックス48巻©︎岸本斉史/集英社)
一方で、「嘘も方便」という言葉があったり、就活で自分の履歴書を華やかに見せたりすることはよくあることです。
この両者は矛盾しています。
嘘はいいのか、悪いのかを考える前に「嘘」についてもう少し深堀をします。
定義
まず、”嘘”と”事実”の意味を辞書で調べてみます。
【嘘】
① 本当でないことを、相手が信じるように伝えることば。事実に反する事柄。人を欺くことば。いつわり。そらごと。虚言。虚偽。うそいつわり。
※温故知新書(1484)「迂踈 ウソ 譃」
※玉塵抄(1563)一〇「范式は信士なりまことなうそのない人なり」
② 正しくないこと。誤り。間違い。「うそ字」
③ (多く「なければ」「なくては」「ないと」などの表現の下にきて) 適当ではないこと。不当。
精選版 日本国語大辞典
【事実】
実際に起こった事柄。現実に存在する事柄。
デジタル大辞泉
辞書によると、実際に起こった事柄が ”事実” であり、そうではないことが ”嘘” だそうです。
では、頭の中に浮かんだけど誰にも言っていない空想や妄想は嘘と言えるのでしょうか。
辞書通りに考えれば、これは嘘になります。
これに対する著者の意見を見てみましょう。
まず、著者によると ”事実” なんてものは存在しないそうです。
存在するのは「真実」だと言います。
それぞれが物事を取捨選択して認識したこと。
つまり、私たちはそれぞれが違う「真実」を持っているのです。
また、私たちは認識の段階から正しく物事を捉えられてはいません。
自分が理解しやすいように、様々な要素を削ぎ落としています。
さらに、とある研究によると、私たちは記憶を都合よく改竄する傾向があるそうです。
こうなると、もはや “事実” なんてものはないのかもしれません。
よって、著者は「嘘」について以下のように考えています。
すべて。
ここで重要になることは、自分の「真実」を相手に共有した時に、相手にとってはそれが「嘘」になるということです。
私たちは、嘘をつくことによってコミュニケーションを図っているのです。
すべて嘘である
まず、「言葉」というものについて考えてみましょう。
これは、間違いなく「嘘」です。
なぜなら、言葉はすべてを表せないからです。
僕は、本で読んで学んだ内容をこのメディアでアウトプットをしていますが、この記事に書かれていることが本の全てではありません。
僕がうまく言葉にできていないこともあります。
人はみんな、言葉によって情報を圧縮しているのです。
「感情」についても同じことが言えます。
感情というものは言葉で表せられるほどシンプルではありません。
感情を言葉で表しているものは、全て「嘘」なのです。
フェイクニュースや陰謀論が耐えない理由も「嘘」によって説明できます。
それは、わかりやすく加工されているものであり、離乳食のようなものだからです。
報道に関しては、有名な風刺画があります。
まさに、これは「真実」を表しています。
客観的な物事をみんな「真実」として解釈しているのです。
そして、それが他人に共有される時、「嘘」になるのです。
人の数だけ「真実」がある
僕は、ゆたぽんというYouTuberがうまく「嘘」を使っているなという動画を発見しました。
これは、エイプリルフールに投稿された動画ではありますが、うまく「嘘」を使っています。
少し脱線しますが、僕はAbemaTVで橋下徹さんと北村晴男さんの討論(喧嘩)を視聴しました。
番組では、ロシアによるウクライナ侵攻の問題や上海電力のメガソーラー事業について話されていましたが、全く議論が噛み合っていませんでした。
おそらく、橋下さんのみている「真実」と北村さんのみている「真実」が異なっているからでしょう。
このように、世の中には「嘘」が溢れていますが、全てに疑ってかかるのではいけません。
大事なのは、自分がどのような「嘘」が好みかを把握することです。
なぜ、人は嘘をつくのか?
前の章では、世の中のほとんどが「嘘」であるということを考えました。
次に、なぜ人は嘘をつくのかということについて考えていきます。
ですが、その前に「嘘」についてさらに深堀します。
嘘の種類
著者は以下の項目で「嘘」を分類していました。
- 悪意の有無
- 被害の程度
- 利益の種類
- 嘘の相手
- 嘘の程度
- 相手のとの距離
例えば、詐欺はどうでしょうか。
詐欺は、被害があり悪意もあります。
経歴詐称はどうでしょうか。
悪意はありますが、被害はありません。
(もちろん、政治家などの経歴詐称は例外です。)
フィクションなどは、悪意と被害のどちらもがありません。
一方、報道番組の誤報は、悪意はないけれど被害が発生します。
これらのように、嘘は様々な種類に分類でき、用途は様々なのです。
人間が嘘をつく根源的な目的
このように、様々な用途で「嘘」は使われますが、著者は人間が「嘘」をつく目的を一言にまとめています。
それは、生き残るためです。
結局のところ、人間関係をうまくやり過ごすために人は「嘘」を使いこなすようになったのです。
そして、「嘘」を使わないものが自然淘汰されていっため、うまく「嘘」をつくものだけが生き残ったと言います。
嘘との向き合い方
嘘の役割
「嘘」をつくことによって、多くの人は人間関係をうまくやり過ごし、生き残ってきました。
さらに、「嘘」には役割があります。
それは、社会の安定させる役割です。
僕は、これを聞いて『NARUTO-ナルト-』のうちはイタチを思い出しました。
彼は、木の葉の里という社会をまもるため、「嘘」をつき続けた人物です。
うちはイタチの名言
そんな彼が、名言を残しています。
…人は誰もが
己の知識や認識に頼り
縛られ 生きている
それを現実という名で
呼んでなしかし知識や認識とは
曖昧なモノだ
その現実は幻かもしれない
人は皆
思い込みの中で生きている
そうは考えられないか?
出典:NARUTO-ナルト- コミックス42巻©︎岸本斉史/集英社
まさに、この本の著者と同じことを言っています。
結局みんな「真実」を持っていますが、「事実」は知ることができないのです。
自分の「真実」を変えるためには、他の人の「真実」(嘘)を知ることや多くの知識を吸収する必要があります。
「嫌い」「うざい」「キモい」と言われたら?
この社会で生きていると同級生などから「嫌い」「うざい」「キモい」と言われる場面があります。
しかし、この時に落ち込む必要はありません。
なぜなら、相手の考える「キモい」は自分が考える「キモい」とは異なっているからです。
嘘の可能性
効果的な「言い訳」術
この本の中でも特に面白いなと思ったのは、「言い訳」についてです。
よく友達との集合時間やバイトの時間に遅れてしまうことがあるかと思います。
そんな時に「寝坊してしまいました。本当にすいません。」というよりも、「隣の家が爆発してしまい、遅れます。」という方がユーモアがあります。
これを聞かされたものは、寝坊して遅れることよりも、隣の家が爆発したことが本当かどうかという方に目が行きます。
これらを言った後に、「ごめんなさい、嘘です。寝坊してしまいました。」と言えばオッケーなのです。
爆発は不謹慎かもしれません。
そこで、僕は考えました。
「起きたら思いのほか時計が進んでいたため、少し遅れます。」
ぜひ、みなさんはバイトに遅刻した時に使ってみてください(自己責任で)。
嘘は希望をつくりだす
「嘘」については、有効な使われ方をしている場面があります。
スポーツです。
強い相手に挑む前に、「大丈夫、絶対勝てる」だとか「絶対できる」と自分に言い聞かせます。
よく考えてみれば「嘘」です。
しかし、「嘘」も自分に信じ込ませることで、とんでもないパフォーマンスを発揮できたりするのです。
また、自分の「嘘」(真実)に閉じこもっていては相手とのコミュニケーションは生まれません。
うまく「嘘」を使うことで、新たな出会いがあり、人生を豊かなものにできるのです。
今後ワールドカップ日本代表のボランチ・守田英正さんの著書も紹介します。
「嘘」をうまく駆使した達人です。
注意点
「嘘」は希望にもなりますが、注意点もあります。
「嘘」を強く信じすぎると、新たな問題が生じる場合があります。
例えば、宗教です。
近年では統一教会の問題が世間を騒がせました。
また、お金に関する「嘘」はトラブルを生みます。
これらには気をつけましょう。
おわりに
僕は、この本を読んで大学の友達を思い浮かべました。
彼は自分の利益を優先したり、自分の失敗を隠すために「嘘」を使いません。
他人を喜ばすために「嘘」をつくのです。
こんなことがありました。
僕は友達との遊びにスペシャルゲストとして呼ばれました。
しかし、30分ほど遅刻をしてしまったのです。
そんな中、その友達は自分も電車が遅れたと言って、僕の遅刻時間に合わせてくれたのです。
彼は実際5分前には集合場所にはついていたのですが、みんなと合流せず、ドン・キホーテで時間をつぶしていました。
「嘘」はコミュニケーションの道具!
おすすめの一冊です。
【著作権者(著者、訳者、出版社)の方へ】
当記事では、本が好きという方に対して面白い本を紹介することを目的としています。
書籍上の表現をそのまま使うのではなく、自分の言葉で描き直すように心がけています。
また、本に対してネガティブな印象を与えないことはもちろん、ポジティブな印象を与えられるように記事を執筆しています。
しかし、万が一行き届かない点があり、記事の削除を望む所有者様がいましたら、お手数ですが、
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